友よ
恨まじ
今日よりは
ねたまじ、
君は
濃藍の
底見えわかぬわたづみの
珊瑚の
宮に
恋を
得て
幸くあり、とに
思ひ
止まむ。
濃藍たゞえて
見えわかぬ
わたづみ
底の
恋なれば
誰が
子誰が
子の
手をとりて
口つけかはし
笑みかはし
ありともいかで
名を
知らむ。
恋を
恋はれぬ
嫉妬もて、
相合ふ
魂を
咀ふとも、
三
月尽の
百蓮華得やは
枯さむあたゝかき
蕾ふくめる
緋牡丹を。
寄藻の
花も
匂はざる。
荒磯の
辺り、
夏の
日に
照り
晒らされて
帆立貝帆を
失なひぬ、
砂の
上に
歯をくひあてゝ
滅ばゞや
とおもひにしも
怨疾の
膿に
悩める
昨夜なりし、
帆を
失なひし
貝ならば
今日より
思ひ
安からむ、
荒磯の
上や
寂光土||ねたみくづれし
花ならば
今日よりなげきあらためむ、
法の
雨降れあゝさらば、
乱れて
飛びし
花片を
濡れ
朽たしめよ
土着せよ。
日毎夜毎に
死にかはり
死にかはりてもあゝ
友よ
ねたまじ
友の
恋人よ、
こひねがはくは
円かなる
愛の
光りを
仰がしめずや。
●表記について
- このファイルは W3C 勧告 XHTML1.1 にそった形式で作成されています。
- 「くの字点」をのぞくJIS X 0213にある文字は、画像化して埋め込みました。