神無月、日は
淡々と
夕ぐれの雲ににほへば、
眼路ひくき
彼方に
薄れ
あはれなる
遠樹ぞ見ゆる。
畦をゆく
斑の牛と
黄牛は声も
慵く、
今は皆
刑の
場に
皮
剥がれ紅く伏しなむ、
かく思ひ定めし如く
とぼとぼと霧にまぎれぬ。
素枯野のあなた、
沼尻の、
荻すすき折れ伏す所、
ああ如何に
髑髏を洗ふ
冬の水音して落ちむ。
ひえひえと身に泌む寒さ、
われは今いづこ歩むや、
ふと思ふ、ああ人の世も
ここにして
終極にかあらむ。
下り坂をぐらくなりて
見るかぎり煙うづまく。
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