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末吉安持




神無月かみなづき、日は淡々あは/\

夕ぐれの雲ににほへば、

眼路めぢひくき彼方かなたうす

あはれなる遠樹えんじゆぞ見ゆる。

あぜをゆくまだらの牛と

黄牛あめうしは声もものうく、

今は皆しおきには

がれ紅く伏しなむ、

かく思ひ定めし如く

とぼとぼと霧にまぎれぬ。

素枯野すがれののあなた、沼尻ぬじりの、

をぎすすき折れ伏す所、

ああ如何に髑髏どくろを洗ふ

冬の水音して落ちむ。

ひえひえと身に泌む寒さ、

われは今いづこ歩むや、

ふと思ふ、ああ人の世も

ここにして終極はてにかあらむ。

下り坂をぐらくなりて

見るかぎり煙うづまく。






底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩※(ローマ数字1、1-13-21)」国書刊行会

   1991(平成3)年6月6日第1刷

入力:坂本真一

校正:フクポー

2018年5月27日作成

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