
秋の木の葉がふるひ出す、
ものにおびへた
眼の色は、
たゞ
白びかり
||何を見る。
ひら/\と
黄葉がちる、
彼れは何処へ?
真暗な、
谷へ
ほこらへ
||あな消へた。

暗い森から
鳥が啼く、
あな
ほろ/\と、そこなりに
·········ある触るる音よ、
暮るる日の
天と人とのなかを過ぐ。
食ひのこしたるパンの切れ、
ぢつとみつめば、涙ぐむ。
白髪頭のお
爺さん、
曲つた腰もかまはずに、
物識り顔に世を渡る。
前にあるのは何かいな、
後ろにゐるのは誰れかいな、
静かに
眼ひらき見よ!
前にあるのは白き家、
後ろにあるは、黒き影、
なかのお爺さんそを知らぬ。

空が焼けた、
真紅にやけた!
悪しき獣を
屠つたやうに
·········。
空の自然
□鏡なら、
人間道
悲惨な心、
写し
出した地獄
□か?
●表記について
- このファイルは W3C 勧告 XHTML1.1 にそった形式で作成されています。
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