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村へ行く

鶴彬




晴れわたる

秋の遠山は、らんじゅくした、女のらたい、ふっくらとした、山肌は、女の、いんこうのごとき、谷をきざむ。ああ、はるかに見る、秋の山山は肉感的なるかな

十時五分前

太陽はさんらんと放散するのに馬車にへこんだ、村の道を、詩人があるく

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一せいに高い、けやきの枝は、やみ上がりの女のかみのごとく、うすく宙をねらう

土蔵の壁の白く明るく。

村を吐き出されたひとびとは、

絵のごとく、でんぱたにうごく高い空||

十時。

地蔵が、もくして立つ、詩の入り口に詩人がつく。






底本:「手と足をもいだ丸太にしてかえし 現代仮名遣い版鶴彬全川柳」邑書林

   2007(平成19)年12月16日第1刷

   2009(平成21)年7月15日第2刷

初出:「北国新聞」

   1925(大正14)年11月13日

入力:坂本真一

校正:染川隆俊

2013年8月15日作成

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