満州というと
やっぱし遠いところ
乾いた砂が たいらかに
どこまでもつづいていて
壁の家があったりする
そのどこかの町の白い病院に
熱で干いた唇が
枯草のように
音もなく
山田のことばで
いきをしていたのか
ゆでたまごのように
あつくなった眼と
天井の
ちょうど中ごろに
活動写真のフィルムのように
山田の景色がながれていたのか
あゝその眼に
黒いカーテンが下り
その唇に
うごかない花びらが
まいおちたのか
楽譜のまいおちる
けはいにもにて
白い雲が
秋の空に
音もなく
とけて
ゆくように
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