戻る

横町の食堂で

竹内浩三




はらをへらした人のむれに、ぼくは食堂横町へながされていった。

給仕女の冷い眼に、なき顔になったのを、大きなどんぶりでもって人目からおおった。

えたいのしれぬものを、五分とながしこんでいたら、ぼくの食事が終った。

えらそうに、ビイルなどのんだ。ビイルがきものにこぼれて、「しもた」と思った。

金風あきの夕焼のなかで、ぼくはほんのりと酩酊して行った。






底本:「竹内浩三全作品集 日本が見えない 全1巻」藤原書店

   2001(平成13)年11月30日初版第1刷発行

   2002(平成14)年8月30日初版第5刷発行

※底本本文の末尾に、(このあと欄外に「アポリネエルも戦場でいいものを書いた」との書きこみがある)とあります。

入力:坂本真一

校正:雪森

2014年12月15日作成

青空文庫作成ファイル:

このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。





●表記について



●図書カード