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仲村渠




初夏ともなれば百円ぐらゐのパナマ帽がいたについて見ばえのある風格をみよ

ちと遊びに来給へと名刺をくれるのだ

名刺といへばかれもまた一流の名士にして普く

八方に疎通してあますところは無いのである

さつそく鄭重な御供物をおくり盛大な葬儀に列してゐるを見る

門札をうつて居を構へてゐる

その収入の道その収入のほどは 否 税務署の吏員氏さへ難渋するのだから 今 これを窺ふべくもないのである

午後かれを訪問すれば したしく応接間に召じいれ

熱あり 魅力あり その広範な経綸は倦ませず若いものを鼓舞するに足るのである






底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩※(ローマ数字1、1-13-21)」国書刊行会

   1991(平成3)年6月6日第1刷

入力:坂本真一

校正:良本典代

2017年10月25日作成

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