純潔にして
生氣あり、はた
美はしき「けふ」の日よ、
勢猛き
鼓翼の
一搏に
碎き裂くべきか、
かの無慈悲なる湖水の
厚氷、
飛び去りえざりける
羽影の透きて見ゆるその厚氷を。
この時、白鳥は過ぎし日をおもひめぐらしぬ。
さしも
榮多かりしわが世のなれる
果の身は、
今こゝを
脱れむ
術も無し、まことの
命ある天上のことわざを
歌はざりし
咎か、
實なき冬の日にも
愁は照りしかど。
かつて、みそらの
榮を
忘じたる
科によりて、
永く負されたる
白妙の
苦悶より白鳥の
頸は
脱れつべし、地、その
翼を
放たじ。
徒にその清き光をこゝに
託したる影ばかりの身よ、
已むなくて、
白眼に世を見下げたる
冷き夢の
中に
住して、
益も無き
流竄の日に白鳥はたゞ侮蔑の
衣を
纏ふ。
●表記について
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