きその日は
思むすぼれ、とぼとぼと
馬を進むる
憂き旅路、これも旅かや
まのあたり、
路のもなかに「愛」の神、
巡禮姿、しほたれて、
衣手輕し。
うれはしき
其かんばせは、さながらに、
位はがれしやらはれのやつれ姿か、
憂愁の
思にくれて吐息がち、
人目を避けて、うなだるゝあはれの君よ。
ふとしもわれを見給ひて呼び給ふやう、
『われは、今、かの
遠里をはなれ來ぬ。
さきにはそこに
汝が身の
心の
臟をぞ
置きたれど、
新の
悦得させむと
持ち
來りぬ』とのたまひつ、
忽ちわれに
憑きたまひ、消え失せたるぞ不思議なる。
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