あはれ、今、「愛」の
路行く君たちよ、
止りても見よ、世の
中に、
われのに似たる
悲をする人ありや。
願はくば、わが言ふところ、聞き終り、
さもこそと、
憐み給へ、
われこそは
憂愁の
宿なれ、戸なれ。
功績のたえて
空しきわれなるに、
「愛」は
情のいと深く、
心樂しきうまし世にわれを据ゑ置き、
人皆のうらやみ
草とし給ふに、
脊向にて囁く
聲す、
『この
若人の、いかなれば、かくも榮ゆる』
あな、
氣疎しや、
勢はすべて
痿えけり、
諸の「愛」の
寶もほろびけり。
はかなくも殘れる身には、
來しかたの
追憶も
憂し。
さながら、われは零落の身を
恥らひて
貧しさを
掩はむとするなれの
果、
おもてには
快樂をよそひ、
心には惱みわづらふ。
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