地は定形 なく曠空 くして黒暗 淵 の面にあり
神の霊水の面を覆ひたりき
神の霊水の面を覆ひたりき
||創世記
晦冥の
仮構の万象そが※[#「門<亥」、U+95A1、19-上-9]性を失し
解体の喜びに酔ひ痴れて
心をのゝき
渾沌の母の胸へと帰入する。
窓外の膚白き一樹は
いかつく張つた大枝も、金属性の葉末もろ共
母胎の汚物まだ拭はれぬ
かゝる
コスモスといふ白日の虚妄を破り、
日光の重圧に 化石の痛苦
味ひつゝある若者らにも
母親の乳房まさぐる幼年の
至純なる淫猥の皮膚感覚をとり戻し
劫初なる
ほの黒き祈り心をしたゝらす······
おんみ 天鵞絨の黒衣せる
涙するわが双の
おんみの胸に埋むるを許したまへ。