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街の乞食

今野大力




銀座の通りに畑が出来て

緑青々とした麦畑が出来ようと

空想していた友よ

一きれのパンをむしって乞食の子に与え

慈善をしたつもりの青年があった。

乞食をするものは

楽しみなのである

何と詩人めいた仕事であるよ

乞食をしていると

皆がお金をお菓子を呉れようとして呉れてゆくのである。

乞食のいない街は

淋しく又殺風景極まっているであろう。






底本:「今野大力作品集」新日本出版社

   1995(平成7)年6月30日初版

初出:「旭川新聞」

   1928(昭和3)年1月7日

入力:坂本真一

校正:雪森

2015年3月8日作成

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