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幼な子チビコ

今野大力




チビコは今年三つになりました、

チビコのお父さんは肺病でねています、

チビコのお母さんは又稼ぎに行くと言っています、

稼がなければ喰べられないから

チビコはある晩ばあちゃんに抱かれてねながら

「メメが痛いメメが痛い」とパッチリ目あけたまま

泣いて泣いて眠りませんでした、

そして翌日、ゲッゲッと食べ物を吐き出しました、

メメは目ではなく腹のようでした、

「チビコお父っちゃんあるかい」

「ある」

「チビコのお母ちゃんバカだね」

「かあちゃんバカないバカない」

チビコは熱心に言いました、

チビコは親の手でだけ育ってはいないのです、

父ちゃんはもう一年も前から遠い施療病院の病床にねたきり

母ちゃんは稼ぎに出かけて留守、

チビコはばあちゃんのふところに入ってねるばかり


チビコは靴を買ってもらいました

母ちゃんが稼いで買ってくれたのです、

チビコはまだ淋しい事を知りません

チビコはひとりで遊んでいます、


父ちゃんは肺病、

母ちゃんは稼ぎ、

ひとりで遊んでるチビコは風邪を引きやすい子です






底本:「今野大力作品集」新日本出版社

   1995(平成7)年6月30日初版

入力:坂本真一

校正:雪森

2015年1月6日作成

青空文庫作成ファイル:

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