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色彩

今野大力




色彩なければ 我ら生はあらざらむ

春宵の薄暮

わが双眼の全き視神経は麻痺して

宇宙は皆灰一色となり

感ずべき何ものもなし


心ただ焦燥して

形なく踊れども

みたすべき何ものもなし


ああ春宵の薄暮

奪われし色彩のかえらじ

燃ゆるなき

古城址の焔と消えんのみ






底本:「今野大力作品集」新日本出版社

   1995(平成7)年6月30日初版

初出:「旭川新聞」

   1924(大正13)年5月13日

入力:坂本真一

校正:雪森

2015年2月17日作成

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