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ある夜、ある宵

今野大力




ある夜は

くらやみの中に

妻をよびよせて

話すことすべて狂人の如く

    *

来年の三月に死ぬと

自分のいのちを予言して

今日すいみん剤を多量にのんだと

いい、胸の苦るしさを訴えて

妻を涙ぐませる

うそのような真実に近いような

ある日の宵

    *

しゃべるとつかれてくるに

しゃべること

自分でよせと思いつつも

たわごとの如くしゃべくる宵






底本:「今野大力作品集」新日本出版社

   1995(平成7)年6月30日初版

入力:坂本真一

校正:雪森

2015年1月6日作成

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