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ヌタプカムシペ山脈の畔り

今野大力




色づく木々の丘の上の林へ

今日一日私は出かけた

めずらしい晴天である

葡萄の葉と楡と、楢と栓とそれらみんな色づいて来た

最早すべて葉を落したものもある

つたをたぐって丘に登る時

私は愉快である

登って見下せば又愉快である

みごもった稲田を広い平野の端から端へ

見てゆくのも愉快である

いろんな野菜の収穫の終った畑も

今は黍と芋蔓がしょんぼりと残っているのみで、

麓の清い澄んだ流れは紅い木の葉を浮べて流れている

木の葉を蹴って狭い山路をゆけば

どんぐりがころころといくつもいくつも転んで行く

ある処は焚火の跡もあり

弁当を食べた空箱もある

私は見晴しのいい処を探ねて行った

そして帰りは

タバコの空箱を拾って

どん栗を入れて

弟と妹のお土産とした。






底本:「今野大力作品集」新日本出版社

   1995(平成7)年6月30日初版

初出:「詩と人生」

   1924(大正13)年2月号

入力:坂本真一

校正:雪森

2015年3月8日作成

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