遠い野中の家より
私を慕うて呉れる友は
今夜も十時がなって帰った
夜露を分けて来て呉れても
あたたかいもてなしさえ
貧しい私達にはゆるされず
ひとえの着物のはじを
幾度か合せ
語りても聞いてもほほえみ乍ら
何程のへだてた思いもなく
ありのままの事を語らいて
お互に解け合うよろこび
本箱からは
勝手なものをとり出して
入れ様ともせず
一ぱいに机の上につまされる
傍にも又誰ひとり
じゃまになる人もなければ
ただ二人自由に
束縛の棚をのがれて
友も私もにごりのない
友情にひたっている
······平岡君と語りし夜に······