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(ツツケンドンに)

中原中也




ツツケンドンに

女は言ひつぱなして出て行つた


襖の上に灰がみえる

眼窩の顛倒

鳥の羽斜に空へ!······


対象の知れぬ寂しみ

神様はつまらぬものゝみをつくつた


盥の底の残り水

古いゴムマリ

十能が棄てられました


雀の声は何といふ生唾液ナマツバキだ!

雨はまだ降るだらうか

インキ壺をのぞいてニブリ加減をみよう






底本:「新編中原中也全集 第二巻 詩※(ローマ数字2、1-13-22)」角川書店

   2001(平成13)年4月30日初版発行

※底本のテキストは、著者自筆稿によります。

※()付きの表題は、作品の冒頭をとって、底本編集時に与えられたものです。

※()内の編者によるルビは省略しました。

入力:村松洋一

校正:hitsuji

2020年5月27日作成

青空文庫作成ファイル:

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