「やい、ガラッ八」
「ガラッ八は人聞きが悪いなア、後生だから、八とか、八公とか言っておくんなさいな」
「つまらねエ見得を張りやがるな、
「情けねえ
「馬鹿野郎、人様が見て笑ってるぜ、往来で見得なんか切りやがって」
「ヘエ」
捕物の名人、銭形の平次と、その子分ガラッ八は、そんな無駄を言いながら、
逢えばつまらない無駄ばかり言っておりますが、二人は妙に気の合った親分子分で、平次のような頭の
「ところで、八」
「へッ、
「今日の行先を知っているだろうな」
「知りませんよ、いきなり親分が、サア行こう、サア行こう||て言うから
「馬鹿だね、相変らず奢らせる事ばかり考えてやがる||今日のはそんな気のきいたんじゃねえ」
「ヘエ||そうすると、いつかみたいに、食わず飲まずで、人間は何里歩けるか、お前に試させるんだ、てな事になりゃしませんか」
「いや、そんな罪の深いのじゃないが||変な事を聞くようだが、
「身体を汚す?」
「
「ヘエ||」
「これから覗いてみようと思うんだが、
「それなら大丈夫で」
「あるかい」
「あるかいは情けねえ、この通り」
「ウ、フ、||その文身の方が情けねえ」
「そう言ったって、これでも蚤の螫した跡よりはでっかいでしょう。||いったいそんな事を言う親分こそ身体を汚したことがありますかい」
「真似をしちゃいけねえ」
「何べんも親分の背中を流してあげたが、ついぞ文身のあるのに気が付いたことがねえが||」
「そりゃア、手前がドジだからだ、文身は確かにある」
「ちょいと見せておくんなさい」
「往来で裸になれるかい、
「見ておかねえと、どうも安心がならねえ、向うへ行って木戸でも
「余計な
無駄を言ううちに、両国の橋詰、大弓場の裏の一郭の料理屋のうち、一番構えの大きい「種村」の入口に着きました。
「
「銭形の親分がお出でだよ」
「シッ」
大きい声で奥へ通すのを、平次は半分目顔で押えました。「種村」の前には世話人が四五人、怪し気な羽織などを引っ掛けて、いちいち出入りの人の身体を
川に面した広間を三つ四つ
「親分、石原のが来ていますぜ」
と袖を引くガラッ八を目で叱って、隅っこの方へ神妙に差し控えました。
図柄でもわかる通り、大模様の文身の発達したのは、歌舞伎芝居や、浮世絵の発達と一致したもので、今日残っている
この物語の時代には、文字や図案めかしい簡単な文身が、
やがて定刻の
次に出たのは、
「真っ平御免ねえ」
クルリと尻をまくると、両方の尻に
第三番目に出たのは、背中へ桜の一と枝に
こうして九十八人裸にして押し並べ、それへ世話人が等級を付けて、第一等には白米が一俵、第二等には反物一反という工合に褒美を出す仕組み||その後、文化八年に一度、天保の御改革に一度、「
ガラッ八の
さて、いよいよ九十八人全部
「あっしのも見ておくんなさい」
パッと着物を丸めて、満座の視線の中へ飛込んだ男があります。
「何だ、
世話人がかき
「俺の文身はこの下なんだ、諸人にひけらかすような安い絵柄じゃねえ」
白木綿を一反も巻いたろうと思う新しい腹巻を、クルクルと解くと、その下から現われたのは真っ白な下腹部を三巻半も巻いて、
「あッ」
九十八人の文身自慢で集まった人達も、思わず感嘆の声をあげました。
見ると、
「御免よ、あっしは忙しい身体なんだ。白米は後から貰いに来るぜ」
「あッ」
「待ちな」
と言う声を後に二階の縁側の
「御用ッ」
続いて飛付いたのは、
「ちょいと親分、私の文身も見てやって下さいな」
と立ち
「えッ、邪魔だッ」
「あれさ、石原の親分、あんなヒョロヒョロ蛇より、もっと面白いものをお目にかけようじゃありませんか」
絡み付いて、利助を引戻したのは、この店の女中とも、客ともつかぬ、変な様子をしておりますが、二十二三の滅法美しい女。
「えッ、何をしやがるんだ、
女を突き飛ばした利助、同じく屋根を渡って、下へ飛降りましたが、ほんのしばらく手間取るうちに、怪しい男はどこへ逃げたか、影も形もありません。
一方利助に突き飛ばされた女、起き上がると思いの外ケロリとして、
「
少し
「そりゃいいとも、お前さんを入れてちょうど百人だ。皆んなこうして薄寒くなるのに、裸になって待っているんだからお前さんにも肌脱ぎになって貰わなきゃならないが、承知だろうな」
「そんな事は何でもありゃしません。なアに銭湯へ行ったと思や||」
女は自分を励ますようにそう言いながら、それでも少し
二百の瞳が、好奇に燃えて、八方からチクチクするほど見張っている
「あッ」
百人が百人、感嘆の声をあげたのも無理はありません。白羽二重に紅を包んだような、滑らかな美しい肌に、彫りも彫ったり、
上半身に十二支の内、
女はさすがに身を恥じて、二つの乳房を
ちょうどそこへ、石原の利助は、広い
「女はどこへ行った。余計な事をしやがるんで、とうとう
「ここに居るよ、石原の親分」
「あッ」
利助もさすがに立ちすくみました。息せき切って飛込んだ鼻の先へ、匂うばかりに半裸体の美女、しかも、その上半身には、十二支の内、七つまで、羽二重に描いた
「お前は何だ」
「女よ||少しお
「その文身は?」
「ご覧の通り十二支さ、子から午まで、あとの五つを見たかったら
「何だと、女」
女はそう言ううちにも、肌を入れて
「反物は私が貰ったよ、皆さん左様なら」
小腰を屈めて、滑るように出ようとすると、
「待て待て、お前は先刻の野郎の仲間だろう、叩けば
と追いすがった利助、先へ廻って大手を拡げます。
ちょうど、その時でした。
「あッ、俺の紙入がない」
「俺の羽織がねえぞ」
「大変、着物がなくなった」
という騒ぎ、九十八人
泥棒は多分、先刻の蛇の文身の男の騒ぎから、引続いて女の文身の騒ぎの間に仕事をしたのでしょう、
「親分、一体ありゃどうしたことです。九十何人裸にされるのを、銭形の親分が黙って見ているという法があるものですか」
とガラッ八、「種村」の騒ぎを後にしての帰り道、あまりの事に平次に喰ってかかりました。
「ハッ、ハッハッ、お前もそう思うかい、いや面目次第もないと言いたいが、実は少しばかり心当りがあって、多分あんな事になるだろうと思っていたんだ」
「ヘエ||」
「だから、お前にも着物や持物に気を付けろと言ったじゃないか。それに、人の言うことを空耳に走らせるから、平次の子分のガラッ八ともあろうものが、財布を盗まれるようなへまをやるんだ」
「まさに一言もねえ、あの中で
「馬鹿野郎、余計な事を言うな」
「ヘエ||、それはそうと、石原の親分が縛って行った、あの綺麗な年増が、やはり曲者でしょうかね」
「そんな事がわかるものか、俺は小泥棒を挙げに行ったんじゃねえ、十二支組の残党が、何人来るか見に行ったんだ」
「えッ」
「お前も知ってるだろう。ひと頃江戸を荒らし廻った十二支組、元は弱い者いじめをする悪侍やならず者を
平次が案外シンミリ話し出したので、
「ヘエ||、二三年前に、そんな
ガラッ八も引入れられて、真面目に受け答えをします。
「ところが近頃妙なことがあるんだ」
「ヘエ||」
「ちょいちょい人殺しがあるが、
「ヘエ||」
「どうだ、この謎は解るかい」
「いいえ」
「感心したような顔をするから、解ったのかと思うと、何だ」
「叱ったっていけませんよ」
二人はそんな話をしながら、平次の家へ帰って来ました。
銭形の平次も、全くこの時ほど迷ったことはありません。近頃
“文身自慢の会”に、十二支組の仲間らしいのは、蛇の文身の男より外には、一人も来た様子はありません。すると、あの上半身に十二支のうち七つまで彫った美女、あの石原の利助に縛られて行った女||というのは何だろう。
平次は腕を
「銭形の親分、ちょいとお顔を拝借さして下さいませんか」
磨き抜いた格子戸を明けて、
もっとも頭の良い平次には、少し勘定の合わないガラッ八がちょうどいい相棒であったように、石原の利助のような、年を取った伝統主義の岡っ引には、こうした
「お、清次郎兄イか、用事は何だ」
と平次。
「大変なことが起りました。ちょいと親分に八丁堀までお出でになるように||と、笹野の旦那様のお言葉添えでございます」
「どうしたというんだい」
「ヘエ||、その、『種村』で
「あ、そんな事か」
「親分はもう御存じで||」
「知ってるわけじゃないが、大方そんな事だろうと思ったよ。実は俺もその
「ヘエ||」
「すると親分の文身はペテンだったんですね」
とガラッ八。
「当り前さ、俺は親から貰った生身を汚すことなんか大嫌いだよ」
「ヘエ||」
二人の子分は全く開いた口が
「すると、あの女は、何の目当てで、文身なんか描いたんでしょう?」
と清次郎、これはなるほどガラッ八よりは事件の急所を知っております。
「それが解ってしまえば何でもないんだが、まだ少しばかり解らないことがある||笹野の旦那のお言葉なら、行かないわけにもいくまいが、俺はもう少し考えを
「ヘエ||」
「それから念のために言っておくが、女の身体を濡れ手拭でよく拭いた上、髪を解いて頭の地を見てくれ、頭の地に何も変ったことがなきゃア、あの女に用事はないが、万一あの頭に
「ヘエ」
二人の子分||清次郎とガラッ八は、宙を飛んで八丁堀へ駆け付けました。
「不届きな女だ。
四十を越した石原の利助が、濡れ手拭で、若い女の肌を拭いているのは、あまり結構な図ではありません。
後ろ手にほんの形ばかり縛られた女は、
左には、瞬く赤い
笹野新三郎は、さすがに見るに忍びないか、
「恥っ掻きな女だ、何だってまた、こんな馬鹿な事をしたんだ。早く言うだけの事を申上げてしまって、旦那様の御慈悲を願え」
「············」
「お前は、あの蛇の文身の男を知っているだろう、あれは十二支組の者と睨んだが、どこにいる何という者だ」
「············」
「フーン、物を言わないつもりだな、それもよかろう。自慢じゃねえが、俺は少しばかり腕が強いんだぜ。幸いお前の文身を洗い落すついでに、一と皮
利助の左の手が女の丸い肩に掛ると、右手に持った濡れ手拭が、恐ろしい勢いで女の背から、肩から、腕を摩擦し始めました。
「あっ」
身をねじ曲げて、もがく女。
「えッ、動くと当りが強いぞ」
ピシリと肩に鳴る利助の
女の肩から腕から背へかけての皮膚||羽二重のような美しい皮膚||は、利助の恐ろしい力に擦り剥かれて、見る見る血がにじみ出して来ました。
「ウーム」
強情に堪える唇から、ゼイゼイ漏らす息に
「あ、これ利助||」
新三郎は見兼ねて手を挙げましたが、
「旦那、放っておいて下さい。こうでもしなきゃア、素直に口を開く女じゃありません。||野郎、黙って見ていずに、塩でも持って来い」
利助は、振り返ってもう一人の子分にそんな事を言います。
ちょうどそこへ、ガラッ八と清次郎が飛込んで来ました。
「平次親分は後から参りますが、その前に女の髪を解いて頭の地を見て下さいって言いましたよ、頭の地に何にもなきゃア、ただの女だが、何か
とガラッ八、自分の親分は予言者のように心得ているだけに、こう言う声も何となく誇らしく響きます。
「よしッ」
利助は案外素直に答えて、女の乱れかかった髪の中から、
「えッ、ジタバタしたってどうにもなる場合じゃねえ、静かにしろ」
女の頭を
「あッ」
とたじろぎました。とたんに、蝋燭が斜めになって、蝋涙がタラタラと女の頬へ。
女は熱いとも言わず、
「どうした利助」
新三郎も思わず縁側から降り立ちました。蝋燭の灯を中心に、女の頭の上に顔を集めると、濃い黒髪の地に、藍色に描かれたのは、紛れもない一匹の鼠の文身。
「お、お」
驚く新三郎の顔へ
「馬鹿にしちゃいけねえ、十二支組のお
桃色の
その晩、銭形の平次が八丁堀へ駆け付けた時は、笹野新三郎の役宅は上を下への大騒動でした。
十二支組の女首領で、頭の地へ鼠の
「平次、遅かった。大変な事になったぞ」
と笹野新三郎。さすがに役目の手前、奉行所へ送らずに自分の役宅から逃げられたでは申し訳が立ちません。
「旦那、あの女が十二支組のお珊とわかれば、かえって筋が
平次は大して驚いた様子もなく、いつもの平静な調子で、お珊が脱けたという縄の切目などを見ております。
「お前は何もかも判っているようだが、少し話してみてはくれまいか」
「ヘエ||、何にも判っているわけじゃございませんが、これだけは確かでございます、十二支組の残党で、生き残っているのが、鼠の文身をしているお珊と、蛇の文身をしている
「············」
「とにかく、お珊の隠れ家だけでも、すぐ突きとめて参りましょう」
「どこへ行くつもりだ」
「なアに、あれだけの十二支を女の肌に描くのは、絵にしたって心得がなくっちゃ出来ません。わっしの背中へ六文銭を描いてくれた、人形町の
平次はフラリと八丁堀の役宅を出ました。人形町までは、若い平次の足では本当に一と走りですが、彫辰へ行って聞いてみると、さて、思ったように簡単には
「そんな
彫辰はこんな事を言いながら、名人らしく、
少し大きい口を利いて、笹野新三郎に別れて来た平次は、しばらく去りもあえず、彫辰の戸口で唸っておりました。
話は少し前後しますが、誰やらに縄を切り離されて、そっと物置から連れ出されたお珊、少し痛む身体を我慢して、導かれるままに、そっと裏門を抜け出しました。ほんの一二町行くと、とある路地から、小手招きする者があります。疲れ果てたお珊は、それを疑う気力もなく、フラフラと入って行くと、突き当りは、ちょっとしたしもたや、開け放したままの入口を入ろうとすると、後ろからパッと飛付いて横抱きにしたものがあります。
「あッ」
と驚く隙もありません。
奥へ担ぎ込まれて、
「お珊、久し振りだなア」
少し
「あッ、お前は
驚くお珊、こう言ったつもりですが、猿轡を噛まされておりますから、もとより声は出ません。恐ろしい苦痛を忍んで、わずかに負けじ魂の眼を光らせます。
「ウ、フ、思い出したか、どうだお珊、お
亥太郎はそう言いながら、立ち上がってお珊の猿轡を解きました。もっとも、同時に脇差を一本、縛られたままのお珊の膝の前へ置くことを忘れるような男ではありません。
「さア、これでよかろう。とにかく、あの八丁堀の組屋敷からお前を助けて来たんだ。俺はお前のためには恩人だ、少しは素直に言うことを聞いてくれるだろうな」
「お珊、手っ取り早く言おう、俺とお前は昔の仲間、三年前に別れ別れになって、今は十二支組もあるわけはねえが、俺はどうもお前が忘られねえ······内々様子を探ると、お前は巳之吉と夫婦みたいに暮しているようだが、ありゃお前悪い
「お黙りッ」
||お珊はたまり兼ねてこう言いました。
「何?」
「黙って聞いていりゃ何だとえ、巳之さんは泥棒や人殺しをするから、別れろッて、||馬鹿も休み休みお言いよ、泥棒や人殺しはお前の方じゃないか、その上、昔の十二支組の者が、自分の素姓を知っているのが恐ろしさに、お前は、仲間の者を片っ端から殺して歩くっていうじゃないか。誰がそんな鬼のような奴の言うことを聞くものか。私は十二支組の
「少し声が高いぞ女、これが見えないか」
亥太郎はドギドギするのを取上げて、お珊の胸へピタリと付けました。
「さア、殺しておくれ、殺されたって、お前なんかの||」
半分言わせず、亥太郎は飛付くように、もう一度猿轡を噛ませました。
「えッ、やかましい女だ、もう少し小さい声で物を言え、野中の一軒家じゃねえぞ」
「············」
「しばらく考えさせてやる。明日になっても強情を張ると、お前ばかりか巳之吉の命はねえぞ」
「············」
「俺はあいつの巣を見届けているんだ、ちょいと笹野の旦那に教えてやりゃ、獄門台に上る野郎だ」
お珊の美しい眼が、
「親分、判った」
その翌日の夕刻、ガラッ八は転がるように平次の家へ飛込んで来ました。
「何が判った」
「情けねえな親分、しっかりしておくんなさい。一日一と晩あっしは寝ずに働いたんだ」
「ガラッ八、俺は寝ずに考えたんだ」
「考えたってこれが判るわけはねえ、足の裏に
「シーッ、小さい声で言え」
「三人で手分けをして、八丁堀から両国まで、銭湯という銭湯を一軒ずつ歩いたんだ。どこの番台で聞いても、足の裏に文身をしている人間なんか、見たこともねえ||って言いましたぜ」
「それじゃ、わかったと言うのは何だ」
「どっこい話はこれからだ。一日一と晩歩き廻って、すっかり汗になって、町内の銭湯へ行って、何心なくその話をすると、||どうだい親分、灯台下暗しだ、この町内にあるぜ||足の裏に文身をしてるのが」
||ガラッ八の声は物々しく低くなります。
「誰だ」
「驚いちゃいけませんよ、石原の利助親分の一の子分、あの清次郎||」
「何、何だと」
平次はこの時ほど仰天したことはありません。それから笹野新三郎の役宅に飛んで行って、一刻ばかり密談をすると、何気ない様子をして、清次郎を呼出させました。
まさか悪事露顕とも知らず、ノコノコやって来た清次郎を平次とガラッ八と二人で取って押えるのに、どんなに骨を折った事でしょう。縄をかけて、足の裏を見ると、ちょうど土踏まずのあたりに、ほんの一寸五分ばかりの小さい猪が文身してあったのです。弁解がましい事を言うのをそのままにしておいて、清次郎の家へ駆け付けてみると、二三人の子分が、お珊を縛り上げて、責めさいなんでいる最中、バタバタと縛り上げて、事情は一瞬の間に解決してしまいました。
十二支組の一人、亥太郎が、自分の悪事の妨げになるので、素姓を知った昔の仲間を片っ端から殺しましたが、お珊の美色に未練があったばかりに、とうとう最後の二人で
巳之吉の隠れ家もすぐわかりました。これも亥太郎の手込めに逢って、九死一生の危ういところを救われ、平次の取りなしで少しばかりの罪はそのまま流してもらいました。
巳之吉が“文身自慢の会”へ出たのは、日蔭の身ながら、あの見事な蛇の文身が見せたかったためで、お珊はそれを察して彫辰に十二支を描かせ、“文身自慢の会”を騒がして、男の危急を救ったのでした。
平次は十二支組の秘密を読むことが出来ないために、随分長い間苦労しましたが、お珊の鼠が頭の地にあり、巳之吉の蛇が腹に巻き付いているのを
文身発達史の最初の