八月の午後の
グラウンドでは三年級のティームが猛練習の最中だった。こっちのスタンドには三年級
「あの
「あれか、あれはそら、先月だったかC・C・D潜水艦事件で手柄をあげた、あの
「ああ、あの少年探偵か、ふーむ」
「二年級のキャプテンをやっているんだ。とても
話しあっていた時||詰衿服に鳥打帽をかぶった混血児の少年が、スタンドに上ってきた。
「春田龍介君にお眼に掛りたいのですが」
「何の用だね」倉持教師が
「手紙を頼まれて来たんです」混血児の少年はそういって、黒い封筒にはいった書面を見せた。
「じゃ待っていたまえ、いま練習中だからね。もうすぐ休憩になる」
「では、先生からおわたし下さい。僕ちょっと急ぎますから」
少年はそういうと、黒い封筒の書面を倉持教師にわたして、さっさと
と練習がすんで、全身汗みずくになった龍介が、皆と
「やあ、諸君御苦労さん······ところで春田君、いま君にこの手紙を届けてきた者があるよ」
「そうですか、どうも有難うございます」
受取ってみると黒い封筒、なんだか妙に忌わしいような気持がする。開けて見ると白い紙へ朱色のインクでこう書いてあった。
少年名探偵春田龍介君足下。我等は貴君に警告す、我等は来る八月十八日深夜二時を期して、貴君の伯父 若林子爵家の所蔵する黄色金剛石 の頸飾 を奪いとるべし。貴君にもしその志あらば、我等は頸飾を中心に一騎討を試みるべし。
「なーんだ、馬鹿馬鹿しい」黒襟飾 組主領
春田龍介はそういって、怪しの手紙を無雑作にポケットへ
龍介が家へ帰ってみると、伯父に当る若林子爵家から、ぜひこっちへくるようにと電話がかかって来ていた。もしやと思ったので、龍介は自動車で出掛けた。
伯父の若林子爵は、書斎で龍介のくるのを待構えていた。そして龍介が大きな書棚を背にして深
警告。我等は貴家所蔵の黄色金剛石 頸飾を頂戴せんと欲す。時日は八月十八日深夜二時。||しかしてこの事の事実なるを証拠だてる為、今十五日深夜二時、貴家の書斎に忍び込み、卓子 の上に朱色の文字を書きおくべし。
「これは同じ物だ!」そういって龍介は校服のポケットから、さっきの挑戦状を取り出して伯父に見せた。子爵は、それを見て黒襟飾 組主領
「で、伯父さんはどうなさいます

「いや万一のことがあるといかんと思ったから、顧問弁護士に頼んで私立探偵を一人
龍介はひょいと深椅子から立上った。
「しかし||
龍介が
「それは分かっているさ。俺の親戚に龍介のいること、そして龍介がサルビヤ号の事件であんな大手柄を立てたことを知っているからなんだ。それでお前を子供扱いに馬鹿にして、からかってきたのさ」
「よし※[#感嘆符三つ、26-12]」龍介はしばらく考えた後決心したように叫んだ「よし、やってやろう、黒
そういったとたん、ふと気がつくと庭に面した窓の外で、今まで中の
時計が四時を打つと、書生が一枚の名刺を
書生に導かれて桂河探偵が入ってきた。大きな男で白麻の夏服に、黒の中折をかむり、大きな色眼鏡をかけている。顔色は日に
「じゃあ伯父さん、僕はまた明日伺います」龍介はなにを
「さあ、急がしくなってきたぞ!」
そういって龍介は、廊下へ出ると共に、ポケットから名刺を取り出した。それは今きたばかりの桂河探偵の名刺だった。龍介はそれを見ると、
「おやおや、こんな物を持ってきちゃった」
そういって苦笑しながら玄関へ急いだ。
「御覧、龍介この通りだ※[#感嘆符三つ、27-16]」
見ると
「黒
「探偵はどうしました?」龍介が訊ねた。
「まあ、お聴き||俺と探偵は昨夜十二時にこの書斎へ入って坐った。そして窓の
龍介は聞き終ると、ふたたび
「ふーむ、いやに下手くそな字だな。ことによると、左手で書いたかも知れぬ」
そしてなおしばらく、書斎の中を
「よし、探偵に会って意見を訊こう!」
龍介は外へ出るとそう呟いて、昨日ポケットに
東京ビルの四階、桂河探偵事務所を訪ねると、受付に十三歳くらいの少女の給仕がいて、十時にならなければ誰も出てこないと答えた。そこで龍介は待つことにした。
「この事務所はいつごろからできたの」と龍介はお茶を持ってきた少女に訊ねた。
「存じません、私一週間ほど前にきたばかりですから」
「ああそう、探偵は何人くらいいるの?」
「さあ、桂河先生に、
「
少女は受付へ戻った。龍介は応接間の中でなお十分ばかり待ったが、待ち切れなくなって立上った。そして、
「
自動車へ乗った龍介は運転手に、
「大急ぎ! 警視庁へやってくれ給え

警視庁で一時間ばかりなにか
「ああ良いところへきた。龍介ご覧、また朱色の脅迫状がやってきたよ」
出されたのは同じ黒の封筒。見ると、中には朱書きで、
警告第二。我等は再び今十六日深夜二時貴家書斎に現わるべし、しかして西側の壁に朱色の証拠を残すべし、もしこの事を警察に告ぐる時は一家残らず惨殺すべきもの也 。
「ふん、なかなかやるな、畜生※[#感嘆符三つ、30-5]」黒襟飾 組主領
龍介はそう呟いて、脅迫状を戻すと、また何もいわずに、とっとと書斎をとび出した。
「坊っちゃん、お手紙を頂きました。何か御用だそうですね」
「気をつけ給え壮太君、こん度坊っちゃんなんていったらそれっきりだ。それで友達の縁を切るから、そのつもりでいてくれ給えよ!」
そう
「ところで、今夜どうしても君に力を借して貰いたい事が起ったのだが、どうだろう」
「ええ、ようござんすとも。
大きな拳骨を振り廻して見せる、龍介は笑って、
「よし

そして龍介は夕食を壮太と共に食べながら、何事かひそひそ話しこんだ。
二人が家を出たのは夜中の十二時、歩いて若林子爵邸の裏へまわると、反対側の邸の黒板塀の蔭へ、二人ともぴったりと身をよせた。
「さあ壮太君、この香水を顔や足に塗りたまえ、蚊に喰われて物音でも立てると鬼は逃げてしまうからね」
壮太はわたされた香水を塗って、ほとんど地面に
「一時だ」龍介が腕時計を見て
「そら行って捉えろ!」龍介が叫んだ。
脱兎のように跳び出す壮太、今まさに逃げようとする怪漢の後ろから、襟髪をむんずと掴んで、
「えい!」肩にかけて投げようとした、とたんにどこから出たか二人の怪漢、あっ! と見る間に、後ろから太い
「うっ!」と、
「やっ



「あっはははは」と笑った三人の怪漢は、闇の中へ走り去った。その中の一人、子爵邸から忍び出た小さいのが、あの混血児少年であるのを龍介は見逃さなかった。
「畜生、ひでえめに会わしやがった」壮太が起きてきて、龍介の足から針金を解きながら云った。
「ねえ、坊っちゃ||じゃねえ春田さん、奴等ぁ何か水みてえなものを
「あれは水じゃない、エーテルという麻酔剤だ、あれだけ嗅げば二日くらいは眠りっ
「え

「心配し給うな、多分こんなことだろうと思って、前にちゃんと予防しておいたんだ。さっき顔へ塗ったのは蚊除け香水じゃない。あれは麻酔剤の力を消す新しい薬なんだ。あれを塗って置けばどんな麻酔剤だって恐れることはないんだ」
「うは||。偉いなあ坊っちゃん||じゃねえ春田さんは······やっぱり
壮太は躍りあがって手を
「だが、これで奴等の手が分かった。あとは糸を
明る十七日の朝、龍介が
「さあ、
文子を送り出すと、そういいながら朝飯も食わずに家を出ていった。無論父の自動車を借りてである。
三十分の後龍介が帰ってきた時には、
「遅いなあ壮太君、僕はもう一仕事やってきちゃったぜ」
壮太は頭を掻き掻き立上った。
「さあ事件はいよいよ面白くなってきた。ところで、こん度はむずかしい役を君に頼まなくちゃならないが、||実はね······」
で、又ひそひそと秘密な相談が始まった。
「よござんす! やりましょう※[#感嘆符三つ、33-14]」
聞き終ると、壮太が拳骨で胸を叩いてわめいた。
「畜生、
「笑いごとじゃない。うっかりすると反対に君が愕く方へ廻るかもしれないぜ」
「なにくそッ、こん度こさあ」
そして壮太は勇気りんりんと出ていった。
龍介はそれからゆっくり朝食を
子爵は
「お早う伯父さん、頭の前の方が痛みやしませんか、痛むならあとですぐ直る良い薬をあげます。||ところで、又

「どうして、お前それを知ってる」子爵は額を揉みながら葉巻を取りあげた。龍介はつづける。
「伯父さんと桂河探偵は一時にお茶を飲んだ。それから十分ばかり経つと、疲れが出てうつらうつらと
「そのとおりだ、全部その通りだ」
「さあこれが薬です、良い匂いのする薬ですよ。これを嗅げばあなたの頭痛はすぐ良くなります。でねえ伯父さん、今晩もう一度同じようなことがあります。そしたら明日いよいよ僕が出掛けてきますよ。明日こそ僕と黒
「今夜はきてくれんのかね龍介」
子爵は心細そうである。
「今夜はいけません、今夜は休養です、今夜は休養です」
そして、悠々として出て行った。
家へ帰ってみると、文子からの手紙がきていた。
横浜市海岸通りマキシム倉庫八番
「よし、これですっかり揃った」龍介はそう呟いて机に向かった。
さていよいよ八月十八日の夜、若林子爵家の書斎で、龍介と子爵は黒
最後の警告。我等は今十八日深夜二時、貴家書斎にて黄色金剛石 頸飾を受取らんとす。貴下は書斎の卓子 の上に、頸飾を出しておかるべし、この命令に叛 く時は一家残らす惨殺すべし。
「一家残らず惨殺す、か!」黒襟飾 組主領
「そんなこと云って龍介、お前ちゃんと計画はできているんだろうね」
「まあ見ていて下さい。ところで桂河さんは遅いですね。へぼ探偵さんは、||実際あんなへぼさんて見たことがないや」
そして龍介は大声で笑った。と、その時えへんと咳払いをしながら当の桂河探偵が現われた。正に龍介のいった悪口を聞いたのだ。大へんに御機嫌の悪い顔で、子爵にちょっと挨拶したまま、黙ってどっかりと自分の椅子へかけた。
「今晩は桂河さん」龍介はあいそよく話しかけた「
「探偵という者は」桂河探偵がむっとした容子で答えた「いつどこで悪漢に顔を見知られるかも知れない、顔を覚えられては探偵するに具合が悪いから、いつもこう
「へえ||探偵ってずい分むだ骨の折れるもんだなあ」龍介は遠慮もなくいう「その癖いつも失敗するんだがなあ······」
「失敬なことを云うな、それじゃ君はこん度の黒
「僕ですか、ああ僕なら明日の午後二時までに、黒
それを聞くと、桂河探偵は腹を抱えてわはははははと笑った。そこで龍介も負けずにわはははははと笑った。
十二時を打った。
子爵と探偵と龍介は書斎に入った。
「いや、探偵の責任としても、頸飾を出しておくことは反対だ」桂河探偵は最後まで頑張った。
しかし子爵が自分で頸飾を出してきて、それを
「こうしておけば、万一頸飾は奪われても皆の命には別条はないから」
と、子爵がいった。
子爵と探偵は、頸飾のおいてある
一時を打った。桂河探偵が立って紅茶の支度をしようとした。そこで龍介がそれを手伝った。温かい薫りの
龍介は自分の椅子にかえった。そして時々そっと、
ふと、皆が紅茶を
一時二十分||三十分。見るとまず子爵が居眠りをはじめた。それからすぐ龍介ががっくり、頭を垂れてしまった。
桂河探偵は危険を感じたのか、よろよろと立上って壁の方へいった。とたんに電灯が消えた。||闇の中で誰かが
暗いままで時間は経ってゆく、十分、二十分。そして時計が二時を打った。
「あっ

見ると龍介は窓際の椅子でぐっすり
「桂河さん、桂河さん」と呼びおこすと、それでもようやく我に返った容子で、
「頸飾は······頸飾はどうしました」と叫んだ。
頸飾は? ああ勿論ありはしない。
「云わんこっちゃない、だから私は出さん方が
探偵はもう一度吠え立てた。
二人はそれから龍介を起こしたが、龍介はなかなか起きなかった。肩を掴んで揺りたてるようにして、五分ばかりかかった後やっと眼をさました。
「や、こりゃきっと、麻酔剤をかけられたんだ」
探偵が叫んだ。龍介はまだねぼけ声だ。
「頸······頸飾は無事ですか······」
「君のおせっかいで、綺麗に
「それでも黒
龍介はよろよろと起上ってねぼけ声で、
「ああよく
そういいながら、又どっかり長椅子に坐り込んで、ぐうぐう眠りこんでしまった。
その翌日。龍介は午前十時に、麹町内幸町の桂河探偵の事務所を訪ねていた。
受付には少女の給仕がいた、しかし先日の少女とは違っていた。龍介は給仕に導かれてゆきながら、低く独言をいった。
「すっかりできているかい······」
少女の給仕はちょっと立停まって、
「左様でございます」といってすぐ「先生のお部屋はここでございます」と
龍介は
龍介は
「お邪魔します桂河さん」龍介が挨拶した。
「ああどうぞ、ちょっとお待ち下さい、いま手紙を一通書いてしまいますから」
書き終ると探偵はそれを封筒にいれて、呼鈴を押した。少女の給仕がくると封筒をわたして、
「もう五分もすると、いつもの子供がくるから、この手紙をわたしてくれ。それでよろしい」
そういって給仕を
「やあ失礼、ところで、なにか御用ですかね」
「そうなんです、朝早くから失礼ですが、至急お願いしたいことがありましてね」
「なる程。で、その用というのは」
「
「な、なに※[#感嘆符三つ、40-10]」
桂河探偵は顔色を変えて
「そんな芝居はたくさんですよ。僕ぁちゃんと見抜いていたんだ探偵。
「なる程、なる程、なる程※[#感嘆符三つ、40-14]」
桂河は喘ぎながら、やおら席を離れた、そして静かに出入口の
「小僧

探偵の態度はがらりと変った。
「まだある!」龍介はちっとも騒がず、にやにや笑いながら、探偵を見ていたが、不意に相手の鼻先を指示して叫んだ。
「帽子を

「あっ

探偵は一歩後ろへ
「畜生、小僧め、
あわや、龍介虎穴に入って、危機一髪!
その時龍介は静かに口をきった。
「ヤンセン、貴様は僕に一騎討をしようといってきたな。だがこの一騎討はたしかに僕の勝だぞ!」
「何だと

「見ろ、貴様の
「なに

あわてて
「それから、お気の毒だが
龍介の言葉に、もうすっかり度胆を抜かれたヤンセンは、あわてふためいて壁に仕掛けてある秘密の小型金庫を明けた。とたん

「

と龍介が叫んだ、右手にはモオゼルの自動
「退れ! もっと、もっとだ。

パッと散る火花、プスッという音がして

「驚いたかヤンセン、僕はこの間きた時に何も
そう云いながら、静かに今ヤンセンのあけた、秘密金庫に歩みよって、中から燦爛と
「ははあんこれだ、||頸飾を先に頂戴したなんていったのは嘘さ。そういえば君が驚いて、あるかないかを調べるだろう、そうすればどこにあるかがすぐ分るからね。いや有難う君」
その時ヤンセンは少しずつ
と、隣室の
「その小僧をたたんじまえ

と
「よし来た

「こら貴様気が違ったのか、あの小僧を」
「やかましいやい毛唐め、
やっというと腰車にかけて、ずでんどっと
「よし、

龍介はそういうと、ヤンセンから鍵を奪って
横浜市海岸通、マキシム倉庫第八号の中には、山と積んだ密輸入品の間に、ごたごたと外国人まじりに七八人の荒くれ男が集まっていた。||いずれも黒服に黒
表へ自動車の着いた音がした。
「親分だ! 見ろ!」と一人が囁いた。
表へ着いたのは黒塗大型の自動車で、乗っているのは混血児少年ただ一人、ひらりと跳び下りたが、倉庫の中へ駈けこんで、
「皆、手が廻ったぞ

「何だ、どうしたジョオジ

「又あの龍介の小僧が出しゃばりやあがったんだ、ヤンセン親分は

「そりゃ大変だ、逃げろ、逃げろ

「表に自動車がある、幌だから丁度

「そうだ、その自動車で逃げろ

度を失った荒くれ共、帽子だ
「待て、騙されるな

「や

それもそのはず、見よ、入口に立っているのは、紛れもない混血児少年ジョオジではないか。
「気をつけろみんな、そこにいるのは龍介という小僧だ、ヤンセン親分を捉まえて、その上に皆を一網打尽にしようとやってきたんだ、みんながあの自動車に乗れば、外からびんと鍵がかかってそのまま警視庁へ送りこもうという計略さ、気をつけろ

後からきたジョオジは、そういいながら先にきたジョオジに詰め寄った。
「違う



「畜生化けやがって、よくも

「そういう貴様こそ皆を騙そうというんだろう、この狐小僧め

「



「よし

「みんなは勝手にこんな奴と遊んでいるがいいや、僕はごめんだ失敬

そして走り出そうとした。とたんに後からきたジョオジが躍りかかった。
「逃がしゃしねえぞ」
「なに! 来るか小僧め

片方がいきなり椅子を掴んで投げつけた、身を沈めてそらす、「畜生

両方強かった、荒くれ共は
「逃げてくれ



「騙されるな!
後のも組伏せられながら喚いた。
「もうたくさんある


とたんに、
「じゃあ分からせてやる、手を挙げろ

そして、あっ

「手を挙げろ! 動くと撃つぞ

それと見るより後からきたジョオジは、鼠のように素速く、地下室へ駈けおりた。
「え畜生

先のジョオジも脱兎のように追っていったが、しかしそこには秘密な抜け道があるのかして、残念ながら遂に見失った。
「御苦労でした、皆さん」
地下室から戻ってきたジョオジは、頭から変装用の
「ねえ諸君

「だから僕が云ったでしょう、二時になると警視庁からくるぞ! って。僕ぁ嘘をいうのは嫌いですからねえ、あははは······」
まさに少年名探偵のいった通りだった。黒
父親や伯父の子爵を前にして、龍介はこん度の事件を話していた。
「僕は喧嘩を売りかけてきた手紙を見た時に、これは僕に恨みのある奴だなと思った。恨みのある奴といえば
書斎へ忍びこんで朱色の字を書くと聞いた時に、伯父さんと探偵がかならず居睡りするのはきっと麻酔剤だろうと思って調べると、窓
それから後は訳はありません。
父も若林子爵もただ感嘆の吐息をもらすばかりだった。龍介はやがて
「だけど残念なのは、あの混血児の小僧を逃がしたことですよ父さん、奴は又きっと
そしてユニフォーム包を持つと、秋の戦いの猛練習をするために、校庭の野球グラウンドへ、元気に歩いて出かけた。