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梶井君
三好達治
なにがしの書物を持ちて
君を訪ふ 慣ひなりしを
花をもて
訪ふ
垂乳根の
君の母とし語へど
この秋の日に
君はあらなく
すずろかに
鐘うち鳴らし しまらくは
君のみ靈に
香をまつらむ
病いゆと
昔淋しき旅をせし
山の小徑を
夢に見しかな
やうやくに
岫
(
くき
)
をめぐりて
海を見る この街道に
憩ふ巡禮
蝶一つ
二つ三ついま下りゆく
溪間に見ゆる
菊畠かな
伊太利の
水兵たちが街をゆく
紺のズボンに
照る秋陽かな
機關車の
車輪
(
こま
)
の轂に 梨の芯
なげつけてみし
鄙驛の晝
底本:「三好達治全集第一卷」筑摩書房
1964(昭和39)年10月15日発行
底本の親本:「定本三好達治全詩集」筑摩書房
1962(昭和37)年3月30日
入力:kompass
校正:杉浦鳥見
2019年2月22日作成
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