劔岳、冠
松、ウジ
長[#ルビの「ちよう」はママ]、
熊のアシアト、
雪渓、前
劔粉ダイヤと
星、凍つた藍の
山々、冠
松、ヤホー、ヤホー、
廊下を
下がる
蜘蛛と
人間、
冠
松は
廊下のヒダで自分のシワを作つた。
冠
松の
皮膚、
皮膚に沁みる
絶壁のシワ、
冠
松の
手、
手は
巌を
引ッ
掻く。
冠
松は
考へてゐる
電車の
中、
黒部峡谷の
廊下の
壁、
廊下は冠
松の
耳モトで言ふのだ、
松よ 冠
松よ、
冠
松は
行く、
黒部の
上廊下、
下廊下、
奥廊下、
鐵でつくった
[#「つくった」はママ]カンヂキをはいて、
鐵できたへた
友情をかついで、
劔岳、
立山、双六
谷、
黒部、
あんな大きい
奴を
友だちにしてゐる冠
松、
あんな大きい
奴がよつて
たかつて
言ふのだ、
冠
松くらゐおれを
知つてゐる男はないといふのだ
あんな
巨大な
奴の懐中で、
粉ダイヤの
星の
下で、
冠
松は鼾をかいて
野営するのだ。
●表記について
- このファイルは W3C 勧告 XHTML1.1 にそった形式で作成されています。
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