食物の
事に
就て、
少し
感じた
事が
有りますから
貴婦人方に
御噺し
致しますが、
今宮本さんから、
段々の
御噺しが
有ツて、
兒護婦の
不注意より、
子供が
種々の
者を
飮み
込み、
夫れが
爲めに
大邊危險が
有るとの
事ですが、
私が
田舍に
居りまする
時分、
之れに
[#「之れに」はママ]就て
實見した
事が
有りますから、
夫れをば
申し
上げ
樣と
存じます、
夫れは二
歳斗りの
子供が、
文久錢とも
云ふべき
錢を
呑んだのです、
恰度私も
其節其塲に
居りましたが、
何も
心得ませんから
唯慌てる
計り、
何か
振舞のあツた
時ですから、
大勢人も
居りましたが、
何れも
青くなり、
手を
束ねて
見て
居る
迄の
事で、
醫者を
呼びますにも、
間に
合はぬと
云ふので、
大層に
遽てました。
其時村の
内に
一人の
老人がありまして、
其塲に
驅け
付けて
參り、
錢を
呑んだと
云ふ
話を
聞たが
就ては、
私が
實驗があるから、
其れをば
何卒行ツて
見て
呉れ、
其法と
申すは、
子供の
兩足を
捕へて
倒さにつるし、
顏を
外に
向けて、
膝もて
背を
撞くと
云ふのですさうすれば、
曾ての
實驗に
依て
出るから、
之を
遣ツて
見て
呉れと
熱心に
勸めました、
折節孰れも
途方に
暮れて
居りましたから、
取敢へず
之を
遣ツて
見樣と
云ふので、
父親が
子供の
兩足を
捕へて
中に
釣し、
外面を
向かして
膝で
脊髓を
撞きました、トコロガ、
容易く
其錢を
口から
吐出しました。
其時集ツて
居ツた、一
同の
者の
喜びは
何の
位で
有りましたか、
商家抔では
多く
錢を
取扱かつて
居るから、
醫者を
呼ぶも
間に
合はぬと
云ふ
樣な
時は、
實驗上隨分用ひて
宜敷き
法の
樣に
存じます。
今濱田宮本兩先生の
御話に
就て、
私が
已徃に
於て
感じましたる
事を
一寸貴方所に
申し
上げましたのです。
●表記について
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