コスモスの花が咲き乱れていました。赤、白、深紅、白、赤、桃色······花は明るい光に揺らいで、にぎやかに歌でも歌っているようです。
暗い土の底で、もぐらの子供がもぐらのお母さんに今こんなことを話していました。
「僕、土の上へ出てみたいなあ、ちょっと出てみてはいけないかしら」
「
「でも、この暗い土の底では、何にも面白いことなんかないもの。それなのに、ほら、このコスモスの白い細い根っこが、何かしきりに近頃たのしそうにしているのは、きっと何か上の方で、それはすばらしいことがあるのだろうと僕思うのだがなあ」
「ああ、あれですか、コスモスに花が咲いたのですよ。夜になるまでお待ちなさい。今夜は
もぐらの子供は、夜がくるのをたのしみに待っていました。
「お母さん、もう夜でしょう」
「まだ、お月さんが山の
しばらくして[#「 しばらくして」は底本では「しばらくして」]、お母さんは、もぐらの子供にこう
「さあ、私の
もぐらの子供はお母さんの後について行きましたが、何だか胸がワクワクするようでした。
「そら、ここが土の上」
と、お母さんは
赤、白、深紅、白、赤、桃色······コスモスの花は月の光にはっきりと浮いて見えます。
「わあ」
もぐらの子供はびっくりしてしまいました。
「
もぐらの子供は、はじめて見る地上の眺めに、うっとりしていました。
すると、コスモスの花の下を、何か白いものが音もなく、ぴょんと
「あ、また兎が庭の方へ出てしまったよ」
と、このとき誰か人間の声がしました。それから足音がこちらに近づいて来ました。すると、もぐらのお母さんは子供を
「
もぐらの子供は土の底で、お母さんにたずねました。
「お
お母さんは静かに