友の死を聞きししばらく京の夜の炬燵もさむくもの言はずけり
觀潮樓歌會に寄りし友おほく世を去りたるにわが茂吉また
如月の
下浣の童馬忌來るごとに京の寒さもうべとおもはむ
われやなほ
無頼なりしよ「赤光」のおひろの歌を愛でたるころは
淺草の觀音堂ををろがめる友の寫眞を
取り
出かなしむ
うで玉子買ひたる歌をおもふとき
淺草夜空目にうかび來る
寛左千夫信綱茂吉と膝
並めて歌つくりしも明治の末か
長崎に
陳玉といふむすめゐて友と往きしもおもひでとなる
友の死を聞きて門邊にわれ乞へど
遊行念佛僧いまだ來らず
二月堂の水取ちかし友の死をおもへばいとど寒さきびしく
友われの手を握りつつもの言ひし
去年の最後のかの日思ふも
四十年を越ゆる
交り思ひ居れば如意嶽おろし吹きてかなしき
京都にも君の弟子ゐてその死をば
宗碵茂樹かなしみてゐむ